インタビュー

2019/12/25 01:09



大量生産の家具では味わえないこだわりの家具を作り続けて40年。

木の声を聞き、木を怒らせないように、一つ一つ丹精こめて作っている。

創–つくりや–屋代表 内山篤さんにこだわりの極意を聞きました。


Q、家具作りを始めるきっかけは?

元々家具販売に長年携わっていました。しかし、製造に関してはまるっきり知識がなく、ある時これではいけないとちょっとした工房を会社の屋上に作って、そこから家具作りを始める事となりました。最初は丸のこをひっくり返してテーブルに取り付けて、自作の工具を作って作業をしていました。最初のうちは、木を見てもその木が何の木であるのかさえわかりませんでした。

世界中にはまだ私が見た事のない木がある。日々勉強です!




Q、家具作りにおいて気をつけている点、こだわっている点は?

やはり長く愛用してもらえるように、仕口には特に気をつけています。仕口とは、木と木を繋げる部分の事で、この部分がしっかりしていれば頑丈になり、長く使って頂く事ができます。ですから、仕口の寸法出しには特に注意して作業をしています。

また、木は生きているので、そのままで使ってしまうと反りが出てしまい、使えなくなってしまう事もあります。そうならないように繊維を切る加工を施すように細心の注意を払っています。繊維を切っておくことで、反りを抑えて家具を長く愛用する事ができます。この繊維の流れを見抜く力は、職人の腕の見せどころだと思います。



お客さんの注文で製作したガスコンロ用囲炉裏。一から図面を引いて作り上げる。


Q、オーダーメイドの作品などは可能ですか?

可能です。皆様ご自分のこだわりのデザインで作って欲しいということで、熱心に打ち合わせをする事もままあります。でも逆に、私が作った作品を見て、私にお任せで作って欲しいというお客様もいらっしゃいます。そういう方は、私の家具職人としての腕を見込んで頼んで頂いているということですから、本当に嬉しく思いますし、その期待に応えるような、もしくはさらに期待を上回るような仕事をしようという気持ちになります。




Q、家具を制作する際、いつもデザイン画を描かれるんですか?

そうですね。お客様からご要望をお聞きしたら、まずどういうデザインにするか、絵に描いてイメージを膨らませると共に、形にしていきます。絵に掛けないものを形にする事はできません。また、お客様にもイメージの中だけだった形を、目で見て確認して頂く事で、より具体的なイメージを掴んで頂けるんです。





Q、絵画が宮崎県美術展で入選された経歴をお持ちですが、そのことがお仕事にも繋がっていると思いますか?

もともと創作する事が好きで、絵を描くのも、家具を作るのも、同一線上にあるのかもしれませんね。どちらも心の中の形を表に現す作業ですからね。絵に関しては、最近はちょっとブランクがあるので、また勉強しなおさないといけません。





Q、イタリアに留学されたとのことですが、印象に残った出来事はありますか?

イタリアに渡ったとき、日本人とイタリア人のご夫婦がいらっしゃったのですが、日本人の奥さんから ”紙芝居の舞台”を作ってほしいと言われました。早速図面を引いたところ、イタリアの他の職人が興味を持ち、自分が作りたいと言い出しました。ところがイタリアには紙芝居という文化がない。私たち日本人には馴染みの深い紙芝居の舞台も、イタリア人には何なのか分からない。分からないまま作るのでとんでもないものが出来てしまったという思い出があります。





Q、イタリアと日本は違いがありますか?

イタリアに行ってびっくりしたのは、その大雑把さです。よく言えばあまり細かいことを気にしない。例えば家具の装飾がきれいに作り上げられているところにいきなり釘を打ったりする。日本人なら隠し釘とか釘目を隠す金具を付けたりするのに、イタリア人は釘を打った上にニスを塗っておしまい。カルチャーショックを受けました。

他にはカンナの掛け方ですね。日本はカンナは引いてかけますが、イタリアでは押してかける。それに慣れるのが本当に大変でした。





Q、将来の展望についてお聞かせください。

この宮崎県綾町は自然豊かな場所で、そういう面をアピールしていく必要があります。私も自然物である木と向き合いながら、綾町の発展に貢献できればと考えています。工房兼ギャラリーのあるこの場所のまわりを整備して、自然の中を満喫できるようなスペースを作りたいと考えて、今も時間を見つけてはユンボに乗って作業をしています。最初は手作業でやっていましたが、自然相手ではまったく歯が立ちませんでした。裏手の小川で水遊びができる程度には整備ができてきたので、お近くにお立ち寄りの際はぜひ遊びにお越しください。



木工家具職人として、ものづくりと真摯に向き合っている姿勢がとても印象的でした。内山さん、貴重なお時間をありがとうございました。

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